医療保険に加入する場合、三大疾病無制限特約(特則)が付加できる保険商品が増えています。実際、医療保険の見直しや加入の相談をすると、多くの場合、三大疾病無制限特約(特則)をおすすめされます。
医療保険に三大疾病無制限特約(特則)は必要か迷うケースもあるかと思いますが、結論からいって、三大疾病無制限特約(特則)は必要かと聞かれれば「必要」と答えます。
準備が可能なら、特約(特則)を付加しておくことにこしたことはないです。
なぜ必要か、どういったケースで役に立つのかなどFPがわかりやすく解説します。
医療保険の三大疾病無制限特約(特則)とは
医療保険の三大疾病無制限特約(特則)とは、がん・心疾患・脳血管疾患の治療を目的とした入院をしたとき、支払い日数の制限なく、入金給付金を受け取れるというものです。
三大疾病とは
三大疾病とは、日本での病気による死亡率で上位を占める「がん」「脳卒中」「心疾患」の総称です。
三大疾病は死亡率が高いだけでなく、治療期間が長期化しやすく、医療費が高額になってしまうことが多いのが特徴です。
ちなみに、2019年の死因の順位は2018年と同様で以下のとおり。
- 第1位「悪性新生物(腫瘍)」
- 第2位「心疾患(高血圧性を除く)」
- 第3位「老衰」
- 第4位「脳血管疾患」
- 第5位「肺炎」
これまで、3大死亡原因と言われていた「脳血管疾患」は4位とはなっていますが、それでも死亡原因のトップ5には入っています。
三大疾病の平均在院日数
厚生労働省の「平成29年度 患者調査」によると、三大疾病の平均在院日数は以下のようになっています。
傷病分類 | 平均在院日数 |
---|---|
悪性新生物(がん) | 16.1日 |
心疾患 | 19.3日 |
脳血管疾患(脳卒中) | 78.2日 |
全体 | 29.3日 |
入院日数が長いのは「脳血管疾患(脳卒中)」で、平均2ヶ月半にも及んでいます。
対して、「悪性新生物(がん)」や「心疾患」は入院日数が半月~20日程度と、全体の平均と比べても短いことが分かります。
がんや心疾患は医療の発展により、通院や在宅で治療する割合が多くなっているため、入院日数が年々短くなっています。
しかし、がんに関しては、入院しなくても、治療自体が長期化しやすいので、結果として治療費は高額になりがちという特徴があります。
医療保険に三大疾病無制限特約(特則)は必要か?
医療保険に付加できる三大疾病無制限特約(特則)が必要かどうかに関しては、
- 健康状態的に加入が可能で、特約保険料分の保険料の負担が可能なら付加しておくことに越したことはない
つまり加入できる方なら、準備してほしい保障です。
がんの場合は、平均在院日数は16.1日ではあるものの、白血病では36.3日と長期化する疾病もあり、さらに、入退院を繰り返すケースなどもあります。
脳血管疾患では、平均在院日数で78.2日ですが、病状によってはリハビリ等で長期の入院を余儀なくされることもあります。
「命を救うこと」を大きな使命とした急性期病院からは病状が安定すると退院の必要がありますが、そのまま回復期リハビリテーション病院等に転院する場合などでは、入院期間は疾患名により、150日、180日など一気に長期化ケースがあります。
- 厚生労働省が定める回復期リハビリテーション病棟入院基準
対象疾患 | 発症からの期間 | 入院期間 |
---|---|---|
脳血管疾患、脊髄損傷、頭部外傷、くも膜下出血のシャント術後、脳腫瘍、脳炎、急性脳症、脊髄炎、多発性神経炎、多発性硬化症、腕神経叢損傷(わんしんけいそうそんしょう)等の発症後もしくは手術後、又は義肢装着訓練を要する状態 | 2ヵ月以内 | 150日 |
高次脳機能障害を伴った重症脳血管障害、重度の頸髄損傷および頭部外傷を含む多部位外傷 | 180日 | |
大腿骨、骨盤、脊椎、股関節もしくは膝関節の骨折、又は2 肢以上の多発骨折の発症後、又は手術後の状態 | 2ヵ月以内 | 90日 |
外科手術又は肺炎などの治療時の安静により廃用症候群を有しており、手術後又は発症後 | 2ヵ月以内 | 90日 |
大腿骨、骨盤、脊椎、股関節又は膝関節の神経、筋又は靭帯損傷後 | 1ヵ月以内 | 60日 |
股関節又は膝関節の置換術後の状態 | 1ヵ月以内 | 90日 |
三大疾病無制限特約(特則)は必要かどうかの考え方のポイント
高額療養費があるから必要ない?
高額療養費制度は、1ヶ月間で医療費支払いの限度額を超えた場合、その超えた分が払い戻されるという制度です。
たしかに健康保険の対象となる入院費に関しては、高額療養費制度があるので、実際の負担は軽減されます。
しかし高額療養費制度の対象になるのは、健康保険の対象になる費用のみ。
差額ベッド代・入院時の食事代などは自己負担となります。
特に差額ベッド代は、病状等により、金銭的に許すなら利用したいという場合もありますね。
こういった場合に、入院日額◯◯円といった形で、無制限ででてくるものがあると、入院時の選択肢が広がります。
長期入院中の収入減の補填に備えられる
三大疾病などで長期の入院を余儀なくされるといった場合、現役世代であれば、仕事を休職あるいは休業することによる収入減があります。
仕事ができず収入が減っても、その他の家族の生活はそのまま維持していかなくてはなりません。
住宅ローンの団信などでも、三大疾病保障付きのものもでていますが、三大疾病無制限特約(特則)と比べ、支払い条件が厳しいケースがほとんど。
家賃の場合は、当たり前に住宅費は掛かり続けますし、子どもの教育費も生活費も予定通り必要です。
三大疾病無制限で入院日額の給付があれば、入院費に充てるばかりでなく、収入減の補填にすることも可能です。
三大疾病無制限特約(特則)の保険料は現役世代はそこまで高くない
「そこまで高くない」という表現は人によっての部分ではありますが、若年層や現役世代の方の医療保険に、三大疾病無制限特約を付加する場合の保険料はそれほど高くありません。
もちろん、月に100円でも200円でも節約したい!という思いの方もあるかとは思いますが、家族が元気で働いているときの数百円、1杯のコーヒー代くらいは将来の安心のために負担してもいいのではないかと思います。
現役世代での長期入院には前述の理由で備えることに越したことはないですし、70代80代になってからの三大疾病での入院は想像以上に長期化しがちです。
自分の親のことを見て思いましたが、できることなら個室に入れてやりたいし、病院での対応もこころなしか個室の方が少し丁寧な扱いをしてもらえるような気がしました。(個人的感想です。)
ただし、三大疾病無制限特約の保険料はシニア世代になってから加入する場合には、わりと高額になってきます。
また健康状態の告知により、付加できないケースもでてきます。
そういったことから、「若いうちは三大疾病にはならないから関係ない」と考えるより、安く加入できて元気な若いうちから三大疾病にも備えておこうと考えることがポイントです。
まとめ
医療保険に三大疾病無制限特約(特則)は必要か迷うケースもあるかと思いますが、結論からいって、三大疾病無制限特約(特則)は必要かと聞かれれば「必要」です。
健康状態が許し、保険料負担が許す範囲なら、付加しておくべき特約(特則)です。
「入院費用は、高額療養費でまかなえるから必要ない」という考えは一部は正しいですが、一部は正しくないです。
差額ベッド代や食費は高額療養費の対象外ですし、長期入院中にも、家の維持、家族の生活費、子どもの教育費など普通にかかり続けることを考えれば、収入減にも対応でき、長期入院時の入院費以外の補填も可能です。
若年層や、現役世代の方であれば、「三大疾病無制限特約」付加がおすすめです。