妊娠出産を控えている人なら「出産にかかる費用はどれくらいか」「利用できる制度にはどんなものがあるか」気になります。出産は病気ではないため、健康保険は使えず、原則的には全ての費用が自己負担となります。しかし、産院での入院費など出産にかかる費用は高額で、どうしてもまとまった金額が必要になるのが現実です。
分娩費用の補助として「出産育児一時金」の制度があります。出産手当金と名前が似ていて混同されやすいですが、別の制度です。
出産育児一時金とはどういった制度なのか、社会保険と国保、扶養の違いによって、制度に違いがあるのか気になります。「出産育児一時金」は、出産するほぼ全ての方が支給対象となるため、詳しく知っておきたい制度のひとつです。申請や手続きのポイントなどお伝えしていきます。
出産一時金とは?
日本では「国民皆保険制度」により、全ての国民がいずれかの公的な医療保険制度に加入しています。この制度により私たちは、かかった医療費の一部のみを負担するだけで病気の治療を受けることができているのです。
出産は病気ではないため、健康保険が適用されません。よって本来であれば、出産のために要した費用は全額自己負担ということになります。
そこで例外的に、健康保険から出産費用を助成するために設けられたのが「出産育児一時金制度」です。
妊娠4ヵ月(85日)以上の方が出産したときは、一児につき42万円(産科医療補償制度の対象外となる出産の場合は39万円(平成27年1月1日以降の出産は40.4万円))出産育児一時金が支給されます。
※産科医療補償制度とは、分娩に関連して重度脳性麻痺となった赤ちゃんが速やかに補償を受けられる制度で、分娩を取り扱う医療機関等が加入する制度です。
出産一時金の対象者は?
社会保険の被保険者が出産したとき
健康保険法における出産とは、妊娠85日(4ヶ月)以後の分娩を指します。この場合には、28日を1ヶ月と換算するため、4ヶ月は(28日×4)85日ということになります。妊娠85日以降の出産は正式に出産したと認められ、社会保険における出産育児一時金の支給対象となります。
なお、妊娠85日(4ヶ月)以降であれば、正常分娩で無事に赤ちゃんが生まれたケースだけでなく、早産で難しい事態に陥ったケース、さらには、死産や流産(中絶も含まれる)といったケースにも適用されます。
付加給付金がある健康保険に加入している場合は、支給額は42万円+付加給付分となります。
※付加給付金の金額は各健康保険によって異なるため、各健康保険組合等へお問い合わせください。
社会保険の被扶養者が出産したとき
妊娠85日(4ヶ月)以上の分娩について、1児につき「家族出産育児一時金」420,000円(産科医療補償制度対象分娩でない場合は404,000円)が給付されます。 早産、死産、流産、人工妊娠中絶のいずれについても給付の対象となります。
名称が少し異なりますが、出産育児一時金と、家族出産育児一時金は同様の給付です。
国民健康保険の被保険者が出産したとき
国民健康保険の被保険者が出産したとき、世帯主からの申請により、1児につき420,000円を支給します。(平成30年4月1日以降の出産で、産科医療補償制度対象外の場合は、404,000円)妊娠12週以上の死産・流産の場合も支給します。
社会保険等、他の保険から出産育児一時金が支給される場合は、国民健康保険では支給しません。
出産一時金の申請方法は?
出産育児一時金の支給方法には「直接支払制度」と「受取代理制度」の二通りあります。どちらを選ぶかによって申請方法が異なります。
直接支払制度
出産前に被保険者等と医療機関等が出産育児一時金の支給申請及び受取りに係る契約を結び、医療機関等が被保険者等に代わって協会けんぽ等に出産育児一時金の申請を行い、直接、出産育児一時金の支給を受けることができる制度です。
社会保険の被保険者および被扶養者の場合
出産育児一時金の支給が協会けんぽ等から直接医療機関等へ支払われることから、医療機関等の窓口で高額な出産にかかった費用を支払う必要がありません。
出産にかかった費用が出産育児一時金の額より少ない場合は、その差額が被保険者等に支給されるため「健康保険出産育児一時金内払金支払依頼書・差額申請書」の提出が必要になります。
国民健康保険の場合
入院する際に国民健康保険の保険証等を提示し、病院等との間で、出産育児一時金の申請及び受取に係る代理契約を締結します。病院等は世帯主に代わって、出産育児一時金を申請し、出産後に病院等が出産育児一時金を直接受け取ります。
出産費用が出産育児一時金を超えた場合には、出産育児一時金を超えた金額のみ病院等に直接支払います。
出産費用が出産育児一時金未満の場合、市区町村の役所保険年金課又は出張所にて世帯主が差額の申請手続きを行います。
受取代理制度
受取代理とは、被保険者(被扶養者)が出産する医療機関等を代理人と定め、出産育児一時金の受け取りを医療機関等に委任する制度です。
これにより、直接支払制度を導入していない小規模な医療機関等で出産する被保険者(被扶養者)においても、出産費用と出産育児一時金との差額だけを医療機関等に支払うことになりました。ただし、この制度を利用するには事前申請が必要となります。流れは以下の通り。
社会保険の被保険者および被扶養者の場合
- 受取代理用の申請書に医師の証明をもらいます
- 出産予定日の2ヶ月前以降に健保組合等へ事前申請が必要です
- 病院が健保に出産育児一時金の請求をします
- 健保から病院に出産育児一時金を支払います
- 認可された病院(小規模届出医療機関等)に限られます
国民健康保険の場合
直接支払制度への対応が困難な病院等で出産する場合、受取代理制度が利用できることがあります。これは、世帯主に代わって、病院等が出産育児一時金を直接受け取る方法ですが、病院等の承諾と、事前に住所地の区役所保険年金課または出張所へ申請が必要です。
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まとめ
健康保険の被保険者または被扶養者である家族が出産したときに、出産費用の補助として請求することができるのが「出産育児一時金」です。国民健康保険の場合も同様です。
出産育児一時金の直接支払制度とは、健康組合から医療機関に出産費用一時金を直接支払ってくれるもの。国保にも同様の制度があります。
出産育児一時金の直接支払制度が使えない医療機関もありますが、その場合は「受取代理制度」が利用できる場合があります。この制度を利用する場合は事前申請が必要なことに注意が必要です。
出産に伴う費用は通常かなりの高額になり、一時的にでも窓口で多額の現金を用意しなければならないとなると、出産自体を迷うケースもありました。
そのため、緊急の少子化対策の一環として、安心して出産できる環境を整備するという観点から、出産育児一時金の「直接支払制度」が設けられたという経緯があります。
社保・国保に関わらず、制度が利用できるのは大きなメリットで大きな安心感があります。早めの情報収集と行動で、安心して妊娠出産に備えたいものです。
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