「貯蓄ゼロ世帯」という言葉を耳にする機会が増えました。FPという仕事柄、ご家庭の資産についてヒアリングさせていただく機会も多いのですが、「貯蓄ゼロ世帯」にお会いしたことはありません。
そもそも貯蓄ゼロ世帯の定義はどうなのかを確認しつつ、貯蓄ゼロ世帯の割合はどうなっているのか見ていきます。
調査結果は、あくまで調査された項目に対しての回答を集計したものです。貯蓄ゼロだから危険とか、平均より多いから安心とか一概には言えない部分についても触れてみたいと思います。
貯蓄ゼロ世帯とは?
貯蓄ゼロ世帯が3割もいる・・という言葉だけが独り歩きしている部分もあるので、まずは貯蓄ゼロ世帯の定義を確認しておきます。
貯蓄ゼロ世帯のデータの出どころは、金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査」です。
調査の金融商品の定義は
「定期性預金・普通預金等の区分にかかわらず、運用の為または将来に備えている部分とする。ただし、商・工業や農・林・漁業等の事業のために保有している金融資産や土地・住宅・貴金属等の実物資産、現金、預貯金で日常的な出し入れ・引き落としに備えている部分は除く」 出典:家計の金融行動に関する世論調査
です。
少し気になるのが、「日常的な出し入れ・引き落としに備えている部分は除く」という点。FPという仕事柄、お客様のご資産に関するヒアリングをする際、日常的な出し入れや公共料金の引き落としなどにも利用している普通預金に数百万円のお金をおいている方も多いですが、それはゼロ世帯にカウントされているということになります。
また、タンス預金に数百万あるなどはゼロ世帯にカウントされていますし、終身保険に積立金(解約返戻金)が貯まっているなども、すべての人が貯蓄と認識できているかどうかは定かではありません。
調査は、委託を受けた日本調査リサーチセンターが無作為に抽出したひとを対象に行っているようですが、同社では一般的に謝礼提供をネタにアンケート調査回答者を募っています。形式がネット調査である点なども考慮すれば、そもそも回答する側の「金融資産」の定義が徹底しているかどうかも疑問に残る部分です。
貯蓄ゼロ世帯の割合に驚き!?
2016年の調査によると、貯蓄がゼロ(金融商品を保有していない)と答えた人は、2人以上の世帯で30.9%(前年と同じ割合)、単身世帯で48.1%(前年は47.6%)でした。2人以上の世帯の3世帯に1世帯、単身世帯の半分は貯蓄がゼロという結果です。
調査結果だけをみれば、2人以上世帯で約3割、単身世帯で約半数が貯蓄ゼロ世帯ということになります。
「自分も貯蓄できていない・・」「貯蓄ゼロ世帯がそんなにいるの?」「自分は平均より貯蓄できている・・」など感想は様々ですが、あなたはいかかですか?
本調査は『20歳から70歳までの単身世帯』が対象ですが、対象者のうち、フルタイムで働いている層は半数程度で、パートタイムが12%、自営業9%、学生が7%、無職(年金生活者も含む?)が19%ほどが対象だったそうですが、調査結果はあくまで今回の調査の目安、捉えたほうが良さそうです。
ただし、厚生労働省が公表している「国民生活基礎調査」でも貯蓄について尋ねていて、2016年の調査において、「貯蓄はない」と答えている人は14.9%いたということを踏まえると、約15%は貯蓄ゼロ世帯がある・・と言えそうです。
「平均」を目安にするとリスクも
収入や貯蓄、人と比べて自分はどうだろう、と気になりますね。しかし平均はあくまで平均。統計を見るときには平均だけでなく中央値をみるとより実態に近い・・というお話は別の記事でもお伝えしましたが、それ以外にも、統計結果に現れない背景もあります。
例えば、現在貯蓄はゼロでも、近い将来相続の予定がある人もいますし、この調査では不動産は除外されている点は知っておきたい点です。
調査結果や、平均値だけみて、平均より上とか下とかで自分の状況を判断するにはリスクもありそうです。
まとめ
貯蓄ゼロ世帯は、2人以上の世帯で30.9%(前年と同じ割合)、単身世帯で48.1%(前年は47.6%)という調査結果でした。
ここでいう貯蓄ゼロ世帯の定義の中には、タンス預金や、日常的に出し入れする口座の残高は含まれないため、実態とは少し違ったものになっているとも言えます。
とはいえ、厚生労働省が公表している「国民生活基礎調査」においても約15%の世帯が貯蓄なしと答えていることから、約15%程度は貯蓄ゼロ世帯がいるものといえそうです。
貯蓄がゼロになる理由はさまざまありますが、支出を減らす、収入を増やすなど何らかの対応を今すぐにでも取り掛かりたいものです。
無駄な支出は見直しにより削減することはできますが、とはいえ、育ち盛りの子どものいる家庭の食費を半分にすることも住居費をゼロにすることも簡単ではありません。
副業・兼業が認められる・・という流れもある中、収入の柱を増やすのも選択肢の1つかもしれません。