医療保険にせっかく加入していても入院給付・手術給付が受け取れない(支払われない)ケースがあります。
入院給付・手術給付が支払われない代表的なケースと、保険が万能ではないと感じた場面を体験をもとにFPがわかりやすく解説します。
医療保険の入院・手術給付が支払われない(受け取れない)主な8つのケース
請求していない
保険に加入していて、入院し手術を受けても、請求しなければ給付金を受け取ることはできません。
最近では外来手術だけでも手術給付がでる商品も増えていますし、自分では入院していないつもりでも、入院料が算定されている場合などは入院給付が受け取れる場合もあります。
保険会社によって異なりますし、加入している商品によりますので(加入した時期により異なることもある)、まずは担当者か、保険会社のカスタマーセンターに問い合わせをしてみるのがいいです。
約款では、「請求する権利は、3年間請求がない場合には消滅します」と時効について定めているケースがほとんどですが、お手続きに必要な書類が揃えばご請求できる場合もあります。加入の保険会社の「保険金請求受付専用ダイヤル」等にきちんと問い合わせてみるといいです。
「きちんと」の意味は、通り一遍しか答えてくれない担当者に尋ねた場合などでは、「3年過ぎると無理ですね」で終わってしまうこともあります。
保険会社のカスタマーの専門部署の人に相談してください。
その会社のその商品の支払事由に該当しないとき
保険金・給付金は、約款で支払事由が定められています。
同じような内容の保険でも、保険会社や商品によって支払条件が異なることがよくあります。
たとえば、2社の医療保険に加入している場合、A社からは給付金が支払われたのに、B社からは支払われなかったということがあります。
複数社加入している場合などは、どの会社にも対象になるかならないか確認が必要です。
入院給付が支払われない主なケース
- 入院日数が所定の日数に満たない場合
(例)「継続して5日以上の入院」で5日目から入院給付金が支払われる場合、1泊2日の入院では支払条件を満たさないため、給付金が支払われません。 - 入院日数が支払い限度日数を超える場合
(例)「1入院限度120日」の医療保険で150日間入院した場合、限度日数を超えた30日分の入院給付金は支払われません。 - 同じ診断名で入退院を繰り返した場合も1入院とみなされ、1入院の支払限度を超える場合も入院給付は支払われません。
- 保障が開始される前に生じた病気や不慮の事故が原因で入院した場合
- 治療を目的としない入院の場合(正常分娩による入院、人間ドック、検査入院など)
検査のための入院であっても検査中に異常がみつかりその場で処置した場合などでは入院給付の対象となる場合もあるので気になることがあれば問い合わせるのがいいです。
手術給付が支払われない主なケース
手術給付金で、支払事由に該当しないケースとしては、「支払い対象の手術に該当しない」というケースが多いです。
最新の医療保険では、支払いの対象となる手術を『約款に記載の88種の手術』ではなく、公的医療保険対象の手術に連動させているタイプも見られるようになってきました。
あくまで「約款所定の手術」が対象ですので、これは各社・各商品で異なります。
支払事由に該当するか、迷う場合には、手術名、手術コードなど確認の上、カスタマーに相談してみるのがいいです。
ただし、相談した場合でも、「実際にお支払い対象となるかどうかは、診断をご提出いただいてからの判断となります」と説明されます。
目安はわかると思いますし、保険会社によっては、支払い対象とならなかった場合には、診断書料相当分を負担してくれるところもあります。そのあたりも確認し、請求してみるという方法もアリだと思います。
免責事由に該当するとき
免責とは、保険会社が保険金・給付金の支払責任を免れることです。保険には、このような免責に該当する免責事項が決められています。
入院給付金の免責事項には以下のようなものがあります。
- 契約者、被保険者または災害死亡保険金受取人が故意または重大な過失により入院したとき
- 被保険者が精神障害または泥酔状態による事故で入院したとき
- 被保険者が無免許運転による事故で入院したとき
- 被保険者が酒気帯び運転またはこれに相当する運転による事故で入院したとき
- 戦争その他の変乱、地震、噴火または津波によって入院したとき(程度によっては全額または一部を受け取ることができます)
告知義務違反による契約(特約)解除
保険の加入にあたって、現在の健康状態、過去の傷病歴、職業などについて事実を告知しなかった場合は、告知義務違反のため契約解除となり、保険金・給付金を受け取ることができません。
重大事由による解除
保険金・給付金をだまし取る目的で事故を起こした場合や、被保険者、保険金受取人、契約者が暴力団関係者、その他反社会勢力に該当すると認められる場合は、契約解除となり、保険金・給付金を受け取ることができません。
契約の失効
保険料が支払われなかったことにより契約が失効した場合は、保険金・給付金を受け取ることができません。
医療保険は万能ではない
医療保険の入院・手術給付が支払われない主なケースを見ていただきましたが、告知義務違反や重大事由による解除、失効などお客様の側に責任があるケースもありますが、「その会社のその商品の支払事由に該当しないとき」というのが思ったより多くあるというのが個人的な印象です。
お客様からの具体的な手術給付が出るでないのお問い合わせでも、保険会社に確認すると「お支払い事由に該当しません」という回答が結構あります。
以前に、「三大疾病無制限特約」に関して、私は、体況的にあるいは経済的に許すなら、長期入院になりがちな三大疾病に関しては無制限特約を付けておくことをオススメしていました。
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三大疾病無制限特約に限りませんが、医療保険の対象になる入院は約款の定める「病院または診療所」への入院でければ対象となりません。
「病院または診療所」とは、
「医療法に定める日本国内にある病院または患者を収容する施設を有する診療所」か、または「これと同等と会社が認めた日本国外にある医療施設」とされています。なお介護保険法に定める介護老人保健施設および介護老人福祉施設ならびに老人福祉法に定める老人福祉施設および有料老人ホームは含まれません。
と表記されていて、介護認定を受けて、医療行為も必要とされる高齢者などが入居する「老健(介護老人保健施設)」「介護療養病床」「介護医療院」での入院では、医療保険は対象とならないので注意が必要です。
わかりずらいのですが、似た名前の「医療療養病床」では医療保険法が適用になるため、民間の医療保険の給付対象となります。
重い脳梗塞などで、入院手術を行った場合でも、急性期病院に入院していられるのは、せいぜい3週間から一ヶ月で、その後は、回復期リハビリ病院に転院し、さらに、最長病状や診断名により180日過ごした後は、在宅復帰する以外は、さらに転院を余儀なくされます。
入院保険の三大疾病無制限特約の対象だから長期の入院も安心と思っていたら、「老健(介護老人保健施設)」「介護療養病床」「介護医療院」での入院は医療保険の給付の対象外となり、三大疾病無制限も万能ではないと感じました。
そういった場合にはでないもの、と知って加入している分にはいいと思いますが、いざそういった状況になって、対象ではないと気がつくのでは気持ちも経済的な状況もダメージを受けるので注意が必要です。
まとめ
医療保険の入院・手術給付が支払われない(受け取れない)主な8つのケースを解説してきました。
この部分だけでも医療保険は万全ではないと感じるのですが、さらに、長期入院に対応するために付加した「三大疾病無制限特約」も、入院する施設(名前は◯◯病院と表記していることもある)によっては、入院給付の対象とならない点など、万能ではない点があることも知っておくことが大事です。
細かい字で表記されていて読みづらいのですが、すべて「約款」に基づいて回答、対応されます。
最近では「Web約款」が推奨され、冊子で約款を受け取らないケースも増えています。
しかし、できれば約款は冊子で受け取っておき、場所はとりますが、保険証券や保険設計書と共に、約款も保管しておくことをおすすめします。
Web約款、保険のプロの自分がみても何か調べたい該当箇所を見つけるのがなかなか難しいです。今は良くても、歳をとってからWeb約款を内容を検索するのは至難の技となるときが来るかもしれません。
保険は長い目で見て役立つようにしておいてこそ安心なものです。